惣流アスカラングレー、誕生日記念作品


本当に大切な人







ネルフ

2015年12月04日

現在時刻17:42分

この日、シンクロテストと言う事で、学校は欠席のチルドレン。



「お疲れ様、3人とも。」

ミサトがシンジ、アスカ、レイの三人に労いの声をかける。

「あ〜疲れた。 ったく、なんでテストに丸1日も使わなきゃいけないのよ。」

「仕方ないよ、機械のトラブルとかでリツコさん達も何かと忙しかったんだから。」

「アンタバカぁ? そんな事分かってるわよ、一々うるさいわね。」

相変わらず支離滅裂な事ばかり言っているアスカ。

因みに、レイ以外は本当に疲れた顔をしている。

「まあまあ、二人とも、今日はこっちの手違いで長引いちゃったのは事実だからさ、

帰ったらゆっくり休んで頂戴。」

「言われなくてもそうするわよ、疲れたったらありゃしない。」

さらに因みに、レイはと言うと

「・・・・・・・・・・。」

相変わらずの無表情で何も喋らない。

「・・・・そう、私は3人目なのね・・・。」

・・・・・何が・・?

初めてのセリフがこれかい・・・(^^;;

「まあ、とにかく着替えてきたら?」

まだ三人ともプラグスーツである。

「当ったり前じゃない。 LCLで体中ヌルヌルして気持ち悪いし。」

「確かに、LCLの感触だけはいつになっても慣れないよね。」

「ほーんと、これで慣れたら人間じゃないわよ。」

アスカは少し呆れ顔で言う。

「あー、そう言えば加持さんは?」

ミサトに聞くアスカ

「あぁ、アイツなら自分の仕事場にいるんじゃない?」

「ふ〜ん、着替えたら会いに行こぉ〜っと。」

疲れてたんじゃないのか・・・?

とは作者の声













ところ変わってネルフ内、加持の仕事部屋

「か〜じ〜さん♪」

「おやおや、アスカじゃないか。」

「来ちゃった♪」

「こんなところへ何の用だい?」

確かに、加持の仕事部屋に来る奴は少ない。

「用って訳じゃないの。 ただ加持さんに会いに来ただけ。」

「そいつは光栄だな。」

加持は相変わらずの男臭い笑みを浮かべた。

「もお、加持さん本気にしてないでしょ?」

アスカは頬をぷくぅと膨らませた。

「ははは、そんな事無いさ。 俺はいつでも本気だよ。」

やはり少しアスカをからかっているようだ。

アスカは少しムッとした。

「だったらキスしよ、加持さん。」

「そう言う事は、本当に好きな人とするもんだ。 俺なんかとするようなことじゃない。」

「前にも言ったけど、アタシが好きなのは加持さんだけ。」

真剣な眼差し。

「・・・・確かにそう言ってくれると嬉しいが、君の本当の相手は俺じゃない。」

「アタシの相手に相応しいのは加持さんだけよ!」

「君はまだ若い。 若過ぎる程にな。 その内分かるさ、本当の相手が誰なのか、な。」

「・・・・・・・・・・・・・。」

アスカは複雑な視線を加持に向けている。

「あ、そうそう、君に渡したいものがあるんだ。」

「え・・?」

そう言うと加持はなにやらデスクの引き出しを開けて、ゴソゴソと漁り始めた。

数十秒後

「はい、誕生日おめでとう、アスカ。」

そう言って加持はアスカに、赤の包装紙をピンクのリボンで巻いたプレゼントを差し出した。

「アタシの誕生日を覚えてくれてたの?」

「もちろんさ。アスカの誕生日を忘れるはずないさ。」

「嬉しい。 ホントに加持さんて素敵。」

アスカは、頬を赤く染めて、プレゼントを嬉しそうに受け取った。

「他の人からは貰ったのかい?」

「うぅん、加持さんが最初。」

「そうか。 ・・・・シンジ君からは?」

「なんでシンジなんかから?」

アスカは不思議そうに聞いた。

「シンジ君に誕生日は教えたのかい?」

「え? なんでバカシンジなんかに教えなくちゃいけないの?」

「いや、別にそう言う意味で言ったんじゃないんだ。 そうか、教えてないか。」

加持は少し思案げな顔をした。

「ま、とにかく14歳の誕生日おめでとう。」

「ありがとう、加持さん。」

アスカは礼を言った。

「ところで、シンジ君以外の人には誕生日の事とか言ったのかい?」

「うぅん、言ってないわ。」

「と、言う事は誕生日パーティーとかの予定はない?」

「・・・・アタシにとって、誕生日なんて意味のないものなの・・・。」

真剣に語り出す。

「小さい時からエヴァにこだわって来たアタシにとって、誕生日なんて、

ただ歳を取るだけの日に過ぎないのよ。」

「・・・・・ま、確かにそうとも言えるな。」

「だが、違った意味に捉えることも出来るぞ?」

「・・・え・・?」

「誕生日って言うのは、歳を取ってどうこうと言うより、俺としては、生まれてきた目出度い日、

として捉えているな。」

「・・・・・・・・・」

アスカは黙って聞いている。

「・・・いつか、君にとって大切な人が出来て、自分の誕生日を祝ってもらった時、

きっと嬉しく思うはずさ。 生まれてきて良かった、ってな。」

「・・・・アタシにとって大切な人は加持さん・・・・。」

「何度も言うようだが、それは違う。」

「違わないわよ!」

アスカはムキになって反論する。

「・・・・・・今日はテストで疲れたろ。 そろそろ帰って休みなさい・・・。」

加持はアスカから視線を外して言った。

「・・・・・・・・・・・・・・。」

話をそらされたアスカは、少し怒った表情を浮かべていた。







コンフォート17

プシュー

「あ、おかえり、アスカ。」

一足先に帰っていたシンジが、アスカに声をかける。

「・・・・・・・。」

トタトタトタ

アスカは返事もなくシンジの前を通り過ぎていく。

・・・・なにかあったのかな?

シンジは思ったが、

「おっと、ハンバーグが焦げちゃうな。」

夕食の準備中であったため、そっちに集中することにした。



ボフッ

アスカは枕に顔を埋めた。

「何よ・・・加持さんのバカ。 アタシはいつだって本気なんだから・・・。」

チラッ

アスカはカレンダーを見た。

今日は12月4日。

アタシの誕生日。

でも、それだけのこと。

誕生日を迎えたからと言って、特別何かが変わる訳じゃない。

別に誰かに祝ってもらいたい訳じゃない。

「そう言えば、なんで加持さんはアタシがシンジに自分の誕生日のことを言ったか

聞いたんだろ・・・・?」

加持との会話を思い出す。

「・・・・・特に意味は無いわよね。」

取りあえずは自己完結。

「・・・・8時・・・か。」

グウ〜。

「・・・・・・・・・・。」

アスカの顔は赤くなった。

「そう言えばもうそろそろ夕食時だわね・・・。」

そう、今の音はアスカのお腹が鳴った音。

「アスカ〜、夕食できたよー。」

タイミング良く、シンジが声をかける。

「今行くわよ!」

機嫌が悪いように返事をする。

特にこれと言って意味があるわけじゃない。

ただ、これが普通になってしまっているのだから仕方ない。



ガラッ

アスカが自分の部屋から出てきた。

「今日はハンバーグ?」

「うん、そうだよ。 アスカの好物だよね?」

「・・・まったく、アンタも呆れるほど気が利くわよね。こと料理に関しては、だけど。」

つまりは、普段はまったく気が利かないクセに、と言いたい訳である。

「ははは・・・。」

シンジは苦笑いを浮かべて乾いた声を漏らす。

「まあ、とにかく、冷めないうちに食べようよ。」

「ま、確かに冷めたら不味いしね。」

二人は夕食を食べ始めた。

「そう言えばミサトは?」

アスカが気付いたように言う。

「ミサトさんなら、今日はネルフで残業だってさ。」

「ふ〜ん。」

「シンクロテストの関係で、じゃないかな。」

「ま、今日は長引いた事もあるし、そうかもしんないわね。」

何気ない会話。

特に楽しい訳でなく、でも、決してつまらないわけじゃない。

1人でいる時より、こっちの方が良いに決まってる。

「・・・・・あのさ、シンジ。」

「ん? なに?」

「今日・・・何の日だか知ってる・・?」

アスカは、遠まわしに聞いて見る。

「え〜っと、今日か。 なんかあったっけ?

う〜ん、今日は12月4日・・・・。

特に何も無いんじゃない?」

シンジは少し考えたが、思い当たることが無いので、

そう答えた。

「そう・・・。」

アスカは沈んだ顔をした。

はは、アタシもバカね。 教えてないのにシンジが知るわけないじゃない。

アスカは心のなかで虚しさに見舞われながら笑った。

「どうかしたの?」

シンジは暗い表情をしたアスカが少し心配になり、聞いてみた。

「なんでもない。 ・・・ごちそうさま。」

そう言うと、アスカは自分の部屋に戻って行った。

この時、時刻は8時半。





アスカは、ベットに寝っ転がり、考えていた。

「なんで、シンジにあんなこと聞いたんだろう・・。」

「シンジが知らないのは当たり前だし、別に知っていたところで

どうって訳でもない。」

ふぅ。

アスカは小さく溜め息をついた。

今日はもう疲れたな。

シンクロテストも長引いたし、加持さんはアタシを見てくれないし。

加持さんなら、アタシを受け入れてくれると思ってた。

でも、もうダメなのかもしれない・・・・。

加持さんにはミサトがいて、アタシの事は子供扱いしかしてくれない。

何度アプローチしても、加持さんはアタシを恋愛対象として見てくれない。

「じゃあ、加持さんにとってアタシはなんなの・・・?」

アスカは自分に問う。

「って、分かりきってることよね。 加持さんにとって、アタシはエヴァのパイロット。

自分の仕事で、アタシの護衛をしていたにすぎない。」

「加持さんなら、アタシをずっと守っていてくれると思ってた。

でも、それはアタシの思い違い・・・・。

そんなこと、前から分かってた。」

・・・・じゃあ、アタシにとって本当に大切な人って・・・?

アスカは自問自答を繰り返す。

「・・・・・分からない。 分からないわよ・・・そんなこと・・・。」





「アスカ・・・今日はどうしたのかな・・・。」

シンジは、リビングでソファーに座って考えていた。

今日のアスカは、いつもと違う。

「シンクロテストの結果でも気にしてるのかな・・・?」

って、アスカに限ってそんなことはないか。

「じゃあ、なんでなんだろ・・・。」

シンジはさっきの夕食の時の会話を思い出した。

「そう言えば、さっき僕に今日は何の日か聞いたけど・・・・・。

・・・・やっぱり分からないな。」

シンジは、一つ思いついた。

と言っても、アスカの問いに対してではなく

「そうだ、ミサトさんに聞いてみよう。」

と、言う事である。

トゥルルルル・・・・

シンジはミサトの携帯に電話をかけた。

『はい、葛城です。』

「あ、ミサトさん?」

『シンジ君? 珍しいわね、アタシに電話かけてくるなんて。』

「あ、はい・・・・・。実は、少しお聞きしたい事があるんです。」

シンジは真剣な声で話す。

「今日、アスカの様子が少しおかしいんです。」

『と、言うと?』

「なんか、あまり元気がなくて、食事中も僕に、「今日が何の日か知ってる?」って聞いてくるし。」

『・・・・・・・・・・・・・。』

「ミサトさん?」

急に黙ってしまったミサトに、シンジは疑問を浮かべる。

『・・・・実はね。』

ミサトは少し経って語り出した。

「はい?」

『実は、今日はアスカの誕生日なのよ。』

シンジは驚いた。

だからアスカはあんな質問をしてきたのか。

「どうして・・・・教えてくれなかったんです?」

『ごめんなさいね。 アスカから口止めされてたのよ。 『別に人に祝って貰いたくなんてないわよ。』

って言う風にね。』

「そうですか・・・。」

『でもね。 アスカも本心では祝って貰いたいと思ってるはずよ。

だからシンジ君にそんな質問をぶつけたんだと思うわ。

だから・・・。 シンジ君、アタシは今日は帰れないけど、

あなたがアスカを祝ってあげて欲しいの。』

『アスカって、小さい時から人から祝って貰ったことがないのよ・・・。

まあ、加持は何かと気を使ってるみたいだけど・・・。』

『だから、シンジ君が祝ってあげて。』

ミサトは頼みこむようにシンジに言った。

シンジも、小さい時から施設に預けられ、他人から祝って貰った事がないことを

ミサトは知っているため、シンジが人を祝うことを快く思わず、

もしかすると拒絶するかもしれないと言う思いもあった。

「・・・・・・・・・・・。アスカの誕生日が今日だと分かっていたら、

ミサトさんに言われなくても祝いましたよ・・・。」

『それじゃあ・・・・。』

「ええ、僕とアスカだけですが、二人で誕生日パーティーをやりますよ。」

ミサトはシンジの言葉に明るくなった。

『よろしく頼むわね、シンジ君。』

「分かりました。」





現在時刻、22時20分





コンコン

それからしばらくして、シンジはアスカの部屋の戸をノックした。

「・・・・・なんの用よ。」

「あのさ、アスカ。 ちょっと出てきてくれないかな?」

「・・・・用件を言いなさいよ。」

アスカはうつ伏せになっている。

「とにかく、出てきて欲しいんだ。」

「・・・・・・・分かったわよ、ちょっとそこどいてなさい。」

アスカシンジに戸の前から離れるように言った。

「分かった。」

シンジは、アスカの言う通り、戸から離れた。

ガラッ

そしてすぐにアスカは出てきた。

確かに、戸を開けていきなり目の前にシンジ(と言うか、人)がいたのでは、何かと妙な気分になる。

「なんの用よ・・・。」

部屋から出てきたアスカに、シンジは、

「まずはそこに座ってくれないかな?」

シンジはリビングのテーブルの横を指差す。

「なんでアンタなんかに指図されないといけないのよ。」

「これは指図なんかじゃなくて、お願い、だよ。」

「・・・・・・・・・・・・・。」

アスカは無言でテーブルのところに着いた。

「じゃあ、ちょっと待ってて。」

そう言って、シンジはキッチンに行った。



しばらくすると、シンジは白い箱を手に持って来た。

「よいしょっと。」

シンジはアスカの向かい側に座ると、箱をテーブルに置いた。

「・・・・・・・・・・。」

アスカはその様子を終始無言で見ている。

だが、その箱の中身が出されると、驚いた表情に変わる。

「アンタ・・・!」

「ちょっと遅くなったけど、お誕生日おめでとう。アスカ。」

シンジは箱の中身、つまりは、バースデイケーキを出して、

祝いの言葉を言った。

「・・・・・・・・・・・。」

しばらくアスカは驚いた表情のまま黙っていたが、やがて下を向いた。

「・・・・・・・・バカシンジのクセに、無理しちゃって・・・。」

その美しく長い髪に隠れていて、表情は見えない。

「気に入らなかった?」

そんなアスカの様子を、シンジは、祝ったことが気に入らないのかと思っていた。

「・・・・・なんで、アンタがアタシの誕生日知ってんのよ・・・。」

「今日のアスカ、なんか変だったし、夕食の時に僕に聞いた事が気になって、

ミサトさんに聞いたんだ。

そしたらアスカの誕生日だって言うから、

洋菓子屋さんに無理言って店を開けてもらったんだ。」

アスカは顔を上げた。

その目は少し赤く、潤んでいた。

「・・・・ホントにアンタってバカシンジね・・・。」

「そうだね・・・・。」

シンジはアスカの嬉しさを隠しているとも感じられる罵倒に、笑って答えた。

「・・・・・・・・。アリガト、シンジ。」

「・・・どういたしまして。」

ぎこちないアスカのお礼の言葉。

だが、その場には、和やかな雰囲気が漂っていた。







アタシは、誕生日なんてどうでもいいと思っていた。

どうせ歳を取ったことを祝うだけの日だと思ってた。

そんな日、アタシはいらないと思っていた。

でも、今、シンジから祝ってもらって、どうしようもなく嬉しかった。

加持さんが言っていた、自分が生まれてきて良かったと、確かに思った。

・・・・まだアタシにとって本当に大切な人が誰なのかは分からない。

でも、誕生日を加持さんから祝ってもらっても、あまり嬉しくなかった。

でも、シンジから祝ってもらったら、凄く嬉しかった。







祝ってもらって嬉しいと感じる人・・・・・。



今、その瞬間、自分が生まれてきて良かったと感じさせる人。











もしかしたら、アタシにとって本当に大切な人は・・・・・・・。











シンジなのかもしれない。






Fin

あとがき

はじめまして、Makkiyと申します。

アスカの誕生日記念と言う事で、この様な小説を書いてみました。

タイトルですが、いいのが思い浮かばなかったので、超シンプルなものにしてしまいました。

私自身、小説を書くのは素人ですので、ちょっと内容的にアバウトかな

とは思うのですが、これ以上はちょっと無理なんです、想像力と文章力が不足しているもので。

では、この辺で失礼します。

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