アスカのちっちゃいってことは―――――

おいもだよっ








『石焼いもぉ〜、おいもだよぉ〜』

 晩ご飯も食べ終わって、2人してくつろいでいるシンジ君とアスカ嬢。
 アスカ嬢に至っては、シンジ君の肩の上でご満悦。

 その時窓の外から、いも屋のスピーカーの音が聞こえて来て。

「あー、シンジっ! いもいもおいもっ! 買ってよぉ〜」

「え? だってアスカ、今ご飯食べたばかりじゃ……」

「おいもは入るトコが違うのっ! さぁさぁ早くぅ!」

 シンジ君の肩からひょいと飛び降り、ソファーの上で仁王立ちになるアスカ
嬢。既に目の色が尋常ではなく……最早、買わないわけにはいきません。

「はいはい……」

 女の子って、何でこう焼きいもとか好きなんだろうか。
 そんなことを思いつつシンジ君は財布を握り、玄関へと向かうのでした。






 数分後。
 シンジ君が戻って来ると、アスカ嬢は待ちきれないと言った表情で彼を出迎
えます。

「おいもぉ〜♪ おいもぉ〜♪」

「はいはい」

 シンジ君は早速買って来たいもを割り、小さい方をアスカ嬢に渡します。

「熱いから気を付けてね」

「馬鹿ねぇ、その熱いのも美味しさの1つじゃないのよ」

 言いながら、既にはくはくほくほくといもを食べ始めているアスカ嬢。
 さっきあれだけ食べたのに、その小さな身体のどこにいもが入るのでせふ?

「うんっ、美味しいよ〜」

「じゃ、僕も……」

 ほくほく。

「お、おいひいね。あふいへほ」

 わち、わちと左右の手の中でいもを転がすシンジ君。

「でしょぉ〜♪」

 そして、2人してもくもくといもを食べていたその時。

 ぷぶぅ〜……。

「…………」

「…………」

 しばし訪れた、沈黙の時。

「や、やぁねぇシンジったら……食べてる最中にお下劣ぅ〜」

「だ、だって仕方ないじゃんか! いも食べておならってのは切っても切れぬ
仲じゃないか」

「馬鹿ねぇ、食べたものがすぐに消化されるハズないでしょ?」

 確かにその通り。
 それ以上の言い訳も出来ず、アスカ嬢の冷ややかな視線を浴びていたシンジ
君でしたが……その時。

 ぷぅ。

 小さな、妙に可愛らしい音が部屋に響いて。

「…………」

「…………」

「アスカ、食べてる最中に以下略」

「わ、わかってるわよぉ……っていうか今のナシね、ナシ」

 恥ずかしいのでしょう、頬を赤らめて言うアスカ嬢。

「全く、僕にはあんなこと言ったくせに……」

「だから、ちゃい! 今のちゃいちゃいちゃいっ!」

「…………」

 そしてシンジ君の冷ややかな目線に耐え切れなくなったのか。
 真っ赤な顔をして、ぷいとそっぽを向いてしまったアスカ嬢。

「ははは、冗談だよアスカ」

 つんつんと、軽くアスカ嬢を突付いて楽しむシンジ君。
 ですが、既にアスカ嬢はご立腹。

「もー! シンジなんか嫌いっ!」

 慌ててなだめようとしたシンジ君でしたが。

「いやほら、あれだよ……『これで2人はクサい仲』」

 次の瞬間。
 シンジ君は、何かがぷちっと切れた音を聞いてしまって。

 その夜は、マンション中に『誰か』の叫び声が木霊したそうな……。






<続くのよのっ>
<戻るのよっ>