あかりちゃんがんばる! 番外編

その3「どうして私がこんな目に?」








 …………。
 ……ん〜……何かうるさいよう……。

「……そんな! どういう……」

 もう、ゆっくり眠らせてよ……。






「あかり! あかりっ!」

「う……ん……なぁに……?」

「あかりっ! 気が付いたかっ!」

 ん〜……何か、暖かいよ……。
 ずっとこのまま、こうしていたい気分……。

「あれ、ひろゆきちゃん?」

 そういえば私、変な薬を飲み込んじゃって……。
 浩之ちゃんに、抱かれてて……。

 だっ、抱かれてるっ!?

 ……あれ?
 な、何か浩之ちゃん……いつの間にか大きくなったような……。

 うふふ……そうか、成長期だもんね。
 いつの間にか大きく、逞しくなってるんだね。

「あかり……俺がわかるか?」

「うん……だいじょぶだよ、ひろゆきちゃん」

「立てるか?」

「うん」

 浩之ちゃんの怪訝な視線が気になったけど。
 ゆっくり床に降ろされて、自分の足で床に立つと。

「あ、あれれ?」

 何だか、いつもと視点が違うみたい……。
 どうしてみんな、私を見下ろしておるのかな?

 ふと、自分の身体を見てみると。

「へっ……きゃぁぁぁぁっ!」

 やっ……やだっ!
 制服がずり落ちてるぅ!

 制服の上着だけがかろうじて肩に引っかかって、何とか最悪の事態は避けら
れたみたいだけど……。
 うっ、上も下もだなんて……。

「あっ、あっ、あのっ……」

 私、どうしてこんな格好……。

 ……格好?

「えええええっ!?」






「あかり! 落ち着けっ!」

「いやぁぁぁっ! ちっちゃい、ちっちゃいよぉ〜っ!」

 な、何で手足がこんなに短いのっ!?
 胸もお尻も、すっごくちっちゃくなってるぅ!

 最近膨らんで来たなって、ちょっと喜んでたところだったのにぃ!
 こんなんじゃ、浩之ちゃんに……。

「あかりっ!」

 だきっ!

「あかり……記憶の方は残ってるだろ……落ち着いてくれ……」

「ひ、ひろゆきちゃん……」

 ……自分が恥ずかしい服装になってることも。
 ……自分の身体に起こった出来事よりも。

 その浩之ちゃんの抱擁が、一番びっくりした。
 おかげで、パニックにならなくて済んじゃったみたい。






「……へ、へぇ……あのおくすり、ほんとにきいちゃったのね」

 ふりふり……。

 歳で言えば、3歳児くらいなのかな。

 大き目どころか、全然余った袖を振ってみながら。

「言ったろ、先輩は本物なんだって」

「……もとにもどれるの?」

 私がそう訊ねると。
 浩之ちゃんは、残念そうに首を横に振り。

「アレ、男性用だったんだってさ……」

 ……男性用、って……?
 今回のは、浩之ちゃん用に調合されたってこと?

「…………」

「男の方が、薬に対する抵抗力が強いんだって……だからお前、今薬が効いて
いるどころか効きすぎなんだと」

「放っておいたら、どんどん小さくなっていくところだったんだけど……でも
一応、それ以上小さくならないようにって……ヒロがあんたに」

「わーっ! それ以上言うな、言ったら狩るっ!」

 浩之ちゃんは、慌てて私の両耳を押さえて。
 な、何なのよ……?

「何よ……私がやろうとしたのに、『自分がやるから』って聞かなかったから
じゃないのよう」

「黙れっ」

 ぺしっ。

 あ、志保が叩かれた。 






「たしかさっき、もとにもどるおくすりもあるって……」

「ああ……アレのことか……」

 浩之ちゃんが、忌々しそうに見つめる先には。
 床に零れた、変な色の液体。

 ど……どどめ色って、確かあんな感じだったかしら……?

「さっきな、また志保の奴がトチ狂いやがってな……半分以上、零しちまった
んだよ……」

「何よう。あんたが私にやらせないからでしょう……この助平」

「うっ、うるせえ」

「ああ、何も知らないあかり……可哀相に」

「うっ」

「私はあかりを守ろうとしただけだったのに……ごめんねあかり、力が足りな
かったわよ」

「ううっ」

 わ……私が知らない間に、何が起こってたのかしら……?






「…………」

「う、うん。とりあえず先輩には悪いけど、今日のところはそれで頼むぜ」

 こくり。

「ちょ、ちょっとヒロ! あかりをこのままにしておくの!?」

「しょーがねぇだろ? 先輩が新しく薬を作ってくれるまでは……」

 そ、それって……。

 もしかして、私……このままなのっ!?






<続くんだよ、浩之ちゃん>
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