あかりちゃんがんばる! 番外編

その1「今日もいつもと同じ日々?」








 ぴぴぴぴっ、ぴぴぴぴっ……。
 ぱちっ。

「ふぁぁ……もう朝なのね……」

 昨夜は夜更かししちゃったから、まだ眠いよ……。
 でも、ちゃんと起きなきゃ。
 私が遅刻したら、イコール浩之ちゃんの遅刻につながるんだもんね。

 さて、今日も一日頑張ろうっと!






「浩之ちゃ〜ん」

 ぴんぽん、ぴんぽーん。

「おう、今行くぜ」

 あら? 今日はちゃんと起きてたのね。
 今日も浩之ちゃんの寝ぼけた顔が見られると思ったのに、残念。
 ……結構可愛いのよ。

 とんとんとん……がちゃっ。

「おっす、あかり」

「おはよう、浩之ちゃん」

 あれ……何だか、今日は寝癖も付いていないのね。
 浩之ちゃんが浩之ちゃんじゃないみたい。






 てくてくと、学校へ向かい歩きながら。

「浩之ちゃん、何かあったの?」

「いや、別に……どうかしたか?」

「ううん……いつもと違って、ちゃんとしてるから」

 ひくくっ。

 あ……れ? 浩之ちゃん、怒っちゃったかな?

「あーかーりー……それ、どういう意味だぁ? まるで俺が普段は駄目駄目君
みたいな言い方じゃないか」

 ううっ……そんなつもりじゃなかったんだけど……。

「ご、ごめん」

「あらぁ? じゃあ、いつもはしっかりしてるとでも言うのかしら?」

「うおっ、出たな」

「何よう、人をゴキブリのように……」

「あっちの方が、デマを喋らないだけマシかもな」

「きーっ! 何がデマなのよ! 『志保ちゃんニュース』は、いつでもお茶の
間の皆さんに真実と愛を提供しているのよっ!」

 ふふっ……くすくす。

 朝から2人とも、仲がいいのね。
 あんな風に自然に浩之ちゃんと話せる志保が、ちょっとだけ羨ましいかな。

「へぇ、『デマ』と『受』か。それは確かに」

「あ、あんたねぇ! どこに耳付けてんのよ!?」

「こことここー」

 両耳を指差して、おどけた口調で言う浩之ちゃん。
 あらら……そろそろ止めた方がいいみたい。

「まぁまぁ2人とも、その辺で……」

 もうすぐ学校に着いちゃうしね。
 登校している生徒の姿も増えてきたから……恥ずかしいよ。

「へっ、今日のところは勘弁しといてやるか」

「その言葉、そっくり熨斗付けて返してあげるわよ」

 ああ、もう……。






「あ、先輩。おはよう」

「…………」

 校門を通ると、来栖川先輩が歩いていた。
 そういえば来栖川先輩、いつもこの場所で浩之ちゃんと挨拶を交わしている
気がする……。
 もしかして、浩之ちゃんが狙われているっ!?

 ああっ……そんな……なんて、考えすぎだよね。
 たまたま学校に着く時間が一緒なだけだよ。
 お互いに、なかなか規則正しい毎日を送っているみたい。

「…………」

「へぇ、そりゃ楽しみだ」

「…………」

「うん、それじゃ放課後になったら部室に行くよ」

 浩之ちゃんは、来栖川先輩と手を振りながら別れた。
 私達も軽く会釈して、浩之ちゃんに付いて行く。

「……あのお嬢様が、ヒロなんかを懇意にしていたとはね」

「『なんか』とは何だ。それに、家柄なんか関係ないぞ」

 うんうん。
 誰にでも分け隔てないのが、浩之ちゃんのすごいところだよね。
 頭ではわかってても、実際に行動出来る人ってあんまりいないよね。

「それで、部室で何があるの?」

 もしかして、逢い引き……?
 そ、それで『楽しみ』なんて言ってたのかしら……?

 ま、まさかぁ。
 学校内での不純異性交友は駄目なんだから……って、まだそう決まったわけ
じゃないか。

「ああ……先輩、昨日新しい薬を作ったんだってさ」

「薬?」

 そういえば……前から怪しい薬とか、怪しげな儀式とかの話を聞いたことが
あったけど……。

「若返りの薬だってよ」

「ほぉ〜……面白そうねぇ」

「お前は来るなよ」

「えーっ!? 何でぇ?」

 と、いうことは……浩之ちゃんと来栖川先輩が、密室で2人きり?
 ……何か、不安だな。

「ね、私は?」

「ん……お前は大丈夫だろ。妙なデマ流すような奴じゃないしな」

 うーん……確かに志保がそんなところに行ったら、大きなおまけが付いた上
で来栖川先輩の噂が広まりそう……。






 時は流れて、放課後。
 浩之ちゃんに連れられて、私はオカルト研究部の部室前に来ていた。

 ……何だかこの部屋の前だけ、気温が低い気がする……。
 でも、男女2人っきりで何か間違いが起こっても駄目だもんね、うん。

 こんこん。

「先輩、入るよ」

 がちゃ……。

 ゆっくりと開かれる扉。
 薄暗い部屋の中、真ん中に来栖川先輩が佇んでいた……。






<続くんだよ、浩之ちゃん>
<戻る>